社員の給料が払えないと、労働基準法24条の違反になり、罰則は30万円以下の罰金です(120条)。罰金は社長などの行為者だけでなく、会社にも科されます(121条)。遅れた給料には、在職中の社員なら年3%、退職した社員なら年14.6%の遅延利息がつきます。
払えないと分かった日は、不足額を出し、売掛金や社長の資金で埋めます。それでも足りなければ、払える分を先に払って、残りの支払日を書面で伝えます。一部を払っても残りの未払いは違反のままですが、払える分を払わずに待つ理由にはなりません。

この記事でわかること
- 給料が払えないとどうなる?罰則は30万円以下の罰金
- 給料が払えないと分かった日にやる4つの順番
- 給料日までに現金を作る方法は売掛金・借入・社長の資金
- 社員に給料が遅れることを伝える文例
- 社長個人のお金で給料を払うときは、役員借入金にする
- 役員報酬を先に下げる、ただし「一時的な資金繰り」では税金の扱いに注意
- 税金と社会保険料は猶予を申請し、給料を先に払う
- 仕事が減って給料を払いきれないときは、休業手当と雇用調整助成金
- 個人事業主が従業員の給料を払えない場合
- 給料の払い方で違法になること
- 事業を続けられないときは、未払賃金立替払制度がある
- 給料が払えないときのよくある質問
- まとめ
給料が払えないとどうなる?罰則は30万円以下の罰金

労働基準法24条は、賃金を「通貨で、直接労働者に、その全額を」「毎月一回以上、一定の期日を定めて」払うよう定めています。資金がないことは、払わない理由として認められていません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 罰則 | 30万円以下の罰金(労働基準法120条1号)。社長などの行為者に加えて会社にも罰金(121条) |
| 遅延利息(在職中) | 民法の法定利率で年3%(令和8年4月から令和11年3月までも3%) |
| 遅延利息(退職後) | 退職日の翌日から年14.6%(賃金の支払の確保等に関する法律6条) |
| 請求できる期間(時効) | 給料は3年、退職金は5年 |
| 残業代の未払い | 6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(119条)。裁判で同じ額の付加金を命じられることがある(114条) |
給料の未払いが続くと、社員が労働基準監督署に申告し、監督署から支払うよう指導(是正勧告)を受けます。それでも払わないと、送検されることがあります。
給料が払えないと分かった日にやる4つの順番
1. 不足額と支払日を数字にする
給料の総額から、支払日までに入る売掛金と手元の預金を引いて、いくら足りないかを出します。源泉所得税と社会保険料は給料から差し引いて会社が預かるお金なので、手取りの合計だけで考えないでください。
2. 売掛金と社長の資金で埋める
入金待ちの請求書があれば、ファクタリングで支払日前に現金にできます。社長個人の預金から会社に貸す方法もあります(後述の役員借入金)。
3. 払える分を先に払う
全額がそろわないときも、払える分は支払日に払います。生活費に困る社員から優先して払う相談をするのも一つの方法です。
4. 残りの支払日を書面で伝える
支払日の前に、未払いの額と、いつ払うかを社員に伝えます。黙って支払日を過ぎると、監督署への申告や退職につながりやすくなります。
給料日までに現金を作る方法は売掛金・借入・社長の資金
| 方法 | 入金まで | 必要なもの | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| ファクタリング | 最短即日 | 請求書・通帳・本人確認書類 | 入金待ちの売掛金がある |
| ビジネスローン | 最短即日〜数日 | 決算書や確定申告書・本人確認書類 | 売掛金がない |
| 銀行・日本政策金融公庫の融資 | 2週間〜1か月 | 決算書・資金繰り表 | 支払日まで時間がある |
| 社長個人の資金(役員借入金) | すぐ | 金銭消費貸借契約書 | 社長に預金がある |
売掛金があるなら、ファクタリングがいちばん早い方法です。借入ではないので返済はなく、審査で主に見るのは自社ではなく取引先の支払い能力です。金融庁は、買戻しを求められる契約などは貸付けの疑いがあると注意しているので、契約書は必ず読んでください。
日本資金支援センターは給料日前の売掛金の資金化に使える

取引先への売掛金を見て審査するので、赤字や借入の多さより売掛先の支払いの確かさが中心です。2社間なので取引先に通知されません。給料日と不足額を伝えれば、必要な額から逆算して見積もれます。
| 手数料 | 2%~(売掛先と取引内容に応じて見積もり) |
|---|---|
| 買取額 | 最大500万円 |
| 審査と入金 | 審査は最短30分、入金は最短即日。過去実績の平均は約4時間 |
| 契約方式 | 2社間(取引先への通知なし) |
| 利用できる人 | 法人・個人事業主。設立年数は問わない |
| 必要書類 | 請求書・通帳コピー・本人確認書類 |
| 使えない請求書 | 支払期限を過ぎたもの、実態のない売掛債権など |
※出典:日本資金支援センター公式サイト(2026年10月確認)。平均入金時間は当社の過去実績をもとにした参考値です。
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手数料の分だけ手取りは減ります。手取りで300万円が必要なら、手数料10%で約334万円、手数料8%なら約326万円の請求書を売ることになります。
社員に給料が遅れることを伝える文例
伝えるのは、支払日の前、全員に同じ内容を、書面で、が基本です。口頭だけでは、あとで「聞いていない」と言われます。
社員の皆さんへ
〇月〇日支給予定の給与について、取引先からの入金が遅れているため、支払日に全額をお支払いできなくなりました。申し訳ありません。
〇月〇日に、給与の手取り額の〇割をお支払いします。残りの金額は、〇月〇日までにお支払いします。遅れた分には法律で定められた遅延利息を加えます。
生活費に困る方は、〇〇まで個別にご相談ください。
令和〇年〇月〇日 株式会社〇〇 代表取締役〇〇
原因、払う額と日付、残りを払う日付、相談の窓口を入れます。「できるだけ早く」のような日付のない約束は、かえって不安を大きくします。
社長個人のお金で給料を払うときは、役員借入金にする
社長の預金を会社に入れて給料を払う場合、会社が社長から借りたお金(役員借入金)として帳簿に付けます。
- 金銭消費貸借契約書を作る 金額、返済の期日と方法を書く。会社と社長の間でも作っておく
- 利息はなくてもよい 社長が会社に無利息で貸しても、会社の側で税金の問題は起きにくい
- 相続のときは財産になる 社長が亡くなると、会社への貸付金は相続財産に数えられる
社長の個人カードローンで借りて会社に入れるのは、会社の業績が戻らないと社長個人に借金だけが残るので、慎重に考えてください。
役員報酬を先に下げる、ただし「一時的な資金繰り」では税金の扱いに注意
社員の給料より先に、役員報酬を減らします。役員報酬は株主総会の決議で減額や不支給にでき、社員の給料は本人の同意なく減らせません。
注意が必要なのは税金です。役員報酬を事業年度の途中で下げると、下げる前の報酬が経費(損金)にならないことがあります。期の途中に下げられるのは、業績が著しく悪化したなどの理由があるときで、国税庁は「法人の一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれません」としています(No.5211)。「今月の給料が足りないから社長の報酬を下げる」だけでは認められない可能性があるので、顧問の税理士に相談してから決めてください。
社長が報酬を受け取らずに会社に残す(未払いにする)方法もありますが、これも税務上の扱いが分かれるので同じく確認が必要です。
税金と社会保険料は猶予を申請し、給料を先に払う
給料は待ってもらえませんが、税金と社会保険料は分割にできる制度があります。納期限から6か月以内に税務署や年金事務所に申請すれば、原則1年以内で分割して納められます(換価の猶予)。猶予を受ける額が100万円以下か、猶予の期間が3か月以内なら担保もいりません。
源泉所得税と社会保険料は、社員の給料から預かったお金です。猶予を受けても納める義務は残るので、分割の計画は無理のない額にしてください。
仕事が減って給料を払いきれないときは、休業手当と雇用調整助成金
受注が減って社員を休ませる場合、会社の都合による休業なら、平均賃金の60%以上の休業手当を払う必要があります(労働基準法26条)。休業手当を払った会社は、売上などの生産指標が一定以上減っていれば、雇用調整助成金で休業手当の一部の助成を受けられます(中小企業は原則3分の2)。申請の前に、管轄の労働局かハローワークで要件を確かめてください。
社員から出産、病気、災害などの費用として請求があったときは、支払日の前でも、それまでに働いた分の給料を払う義務があります(労働基準法25条の非常時払)。資金繰りが苦しい月にも起こり得るので、頭に入れておいてください。
個人事業主が従業員の給料を払えない場合
個人事業主も、人を雇っていれば労働基準法24条の対象で、罰則も同じです。会社と違って事業主本人がすべての支払いを個人で負うので、事業をやめても未払いの給料は残ります。
個人事業主の事業でも、労災保険の適用事業として1年以上事業を続けていれば、未払賃金立替払制度の対象になります。破産の申立てをしない場合でも、中小企業の事業主なら、労働基準監督署長が「事実上の倒産」を認定すれば制度を使えます。
給料の払い方で違法になること
労働基準法24条は、給料の払い方について4つの原則を定めています。資金繰りが苦しいときほど、次の払い方をしてしまいがちです。
| 原則 | 内容 | 違反になりやすい例 |
|---|---|---|
| 通貨払い | お金で払う。口座振込は本人の同意があれば可 | 自社の商品や商品券で払う |
| 直接払い | 本人に払う | 本人の同意なく家族や代理人に払う |
| 全額払い | 全額を払う。税金や社会保険料などは差し引ける | 会社の都合で一方的に減らす、勝手に天引きする |
| 毎月1回以上・一定期日払い | 毎月決まった日に払う | 2か月分をまとめて払う、給料日を勝手に変える |
給料が地域別の最低賃金を下回ると、最低賃金法違反として50万円以下の罰金の対象になります。社員の規律違反による減給も、1回の額は平均賃金の1日分の半額まで、総額は1回の給料の10分の1までと労働基準法91条で決まっています。
人を減らすなら整理解雇の4つの要件を満たす
給料が払えないことを理由に、いきなり社員を解雇すると不当解雇として争われるおそれがあります。経営不振による人員削減(整理解雇)は、裁判例で次の4つの点から判断されます。
- 人員を減らす経営上の必要があるか
- 役員報酬の削減や採用の停止など、解雇を避ける努力をしたか
- 解雇する人の選び方が合理的か
- 社員や労働組合に十分説明し、協議したか
再建か清算か、会社の倒産手続きは4つ
| 手続き | 目的 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 民事再生 | 再建 | 経営者が経営を続けながら、裁判所のもとで借金を減らして返す。中小企業で使われることが多い |
| 会社更生 | 再建 | 株式会社が対象。裁判所が選んだ管財人が経営する。大きな会社向け |
| 破産 | 清算 | 会社の財産を処分して債権者に配り、会社はなくなる |
| 特別清算 | 清算 | 株式会社が対象。債権者の同意を得て、破産より簡単に清算する |
どの手続きでも、未払いの給料は一般の借金より優先して払われる扱いがあります。手続きを選ぶ段階から弁護士に相談してください。
事業を続けられないときは、未払賃金立替払制度がある
会社が倒産して給料が払われないまま社員が退職した場合、労働者健康安全機構が未払いの給料の一部を立て替えます。社員は立て替えられたお金を返す必要はなく、機構が会社(破産管財人など)に請求します。
| 退職日の年齢 | 未払賃金の限度額 | 立替払の上限 |
|---|---|---|
| 45歳以上 | 370万円 | 296万円 |
| 30歳以上45歳未満 | 220万円 | 176万円 |
| 30歳未満 | 110万円 | 88万円 |
立て替えられるのは、未払いの定期給料と退職金の80%です。賞与、解雇予告手当、遅延利息は対象外で、代表権のある役員や同居の親族も原則として対象外です。退職後6か月以内に、裁判所への破産などの申立てか、労働基準監督署長への認定申請がないと使えません。
給料が払えないときのよくある質問
病院や介護施設で給料が払えないときも同じですか
同じです。病院や介護施設も、職員を雇っていれば労働基準法24条の対象です。診療報酬や介護報酬は請求から入金まで約2か月かかるので、この入金待ちの債権を支払日前に資金化する方法もあります。
給料が払えないと社長は逮捕されますか
給料の未払い(24条違反)の罰則は30万円以下の罰金だけで、拘禁刑はありません(残業代の未払いは119条で6か月以下の拘禁刑もあります)。刑事訴訟法199条により、罰金だけの罪で逮捕されるのは、住所が定まらない場合か、正当な理由なく呼び出しに応じない場合に限られます。監督署から是正勧告を受けたら、期日までに払うか、支払いの計画を出して説明してください。
一部だけ払って、残りを来月に回してもいいですか
残りの未払いは、払い終えるまで24条違反のままです。それでも、払える分を先に払うことは禁じられていません。払える分を支払日に払い、残りの支払日を書面で約束してください。翌月にまとめて2か月分を払うことを最初から予定するのは違反です。
社員の同意があれば給料を減らせますか
社員の自由な意思による同意があれば減額はできますが、一方的な減額は無効です。同意は書面でとり、減らす期間と理由を明確にしてください。
給与ファクタリングとは違うのですか
違います。給与ファクタリングは、社員が自分の給料を受け取る権利を業者に売るもので、金融庁は貸金業にあたると整理しています。会社が取引先への売掛金を売る事業者向けのファクタリングとは別のものです。
まとめ
- 給料の未払いは労働基準法24条違反。罰則は30万円以下の罰金で、会社にも科される
- 遅延利息は在職中年3%、退職後年14.6%。給料の時効は3年
- 払える分を先に払い、残りの支払日を書面で伝える
- 売掛金があれば、ファクタリングで給料日前に現金にできる
- 役員報酬は先に下げるが、一時的な資金繰りの都合では損金にならない可能性がある
- 事業を続けられないときは、未払賃金立替払制度で社員は最大296万円まで受け取れる
この記事で確認した一次情報の出典
本文の内容は、2026年10月21日に次の情報源で確かめました。
- e-Gov法令検索「労働基準法」・「賃金の支払の確保等に関する法律」
- 法務省「令和8年4月1日以降の法定利率について」
- 労働者健康安全機構「未払賃金の立替払制度の概要」・厚生労働省「未払賃金の立替払制度の概要」
- 国税庁 No.5211「役員に対する給与」・「納税に関する総合案内」
- 日本年金機構「厚生年金保険料等の猶予」
- 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
- 日本資金支援センター 公式サイト
この記事は日本資金支援センター編集部が、公的機関の資料と各社の公表値をもとに作成しています。
